ATSとは「採用管理システム」の略称です。ほとんどの求人募集企業がATSで履歴書をフィルタリングするため、応募者はATSを通過するための履歴書を作成するということが不可欠です。ATS(時には「応募者追跡システム」とも呼ばれます)は、履歴書から応募者の能力・ 資格に関するキーワードを検索することで、採用担当者の作業負担を軽減するソフトウェアプログラムです。
こうしたシステムは履歴書の内容を精査し、求められるキーワードの数に基づいてスコア付けを行います。スコアが低い履歴書は、人間にレビューされる機会もなく却下される一方で、上位にランクされた履歴書は採用担当者に読み進められる機会を得ることができます。
例えばある雑誌社が「イラストやデザイン分野で5年の経験があり、Photoshop、Illustrator、InDesignのスキルを保有するアートディレクター」を募集しているとします。太字部分の単語は企業がATSに入力し、履歴書からキーワードを検索させる対象となります。
あなたがこの求人条件をすべて備えている場合、理想的な人材である可能性が高いです。しかし、もしあなたが自分自身を「最新の業界ソフトを駆使し、迫力ある図面とレイアウトの制作実績を保有するグラフィックアーティスト」と述べていたとします。すると、ATSのソフトウェアは、業務経験との関連性を認識しないため、あなたの履歴書が低く評価される可能性が高くなるのです。
役職名 (アートディレクターとグラフィックアーティスト) に違いがあることから始まり、募集要項に含まれていないという理由でシステムが認識できない可能性のある単語を使用して、職歴を記載したとします。特に検索条件が厳格な場合、結果として最下位にランク付けされるか、人間側のレビューを経ずに履歴書が却下されてしまうかもしれません。
実際、75%にも上る履歴書がこうした理由で人間側によるレビューを経ずに自動的に却下されているといわれているのです。だからこそ、求職者がATSの仕組みを理解し、ATSに対応した 履歴書作成のポイントを押さえることが欠かせないのです。「機械に打ち勝つ」コツをご紹介します。
ATSに最適化するにはどうしたらいいでしょうか?
ATSに最適化した履歴書を作成するには、求人に関連するスキルや経験のキーワードを使うことがポイントです。例えば、募集要項や求人票にあるキーワードをそのまま使用するのです。
募集要項や求人票の記載に注目し、可能な限り同じ言葉を使う
魚の興味を引かない餌を使って釣果をあげる漁師はいないでしょう。同様に、採用担当者から提示された要件を無視していては、仕事を獲得することはできません。募集要項や求人票を詳細に確認して、求められる人材像を正確に把握することが大切です。もちろん虚偽の経験を記載してはいけませんが、要件に合致するスキルを保有している部分については、必ずアピールすべきです。それがATSに対応した履歴書を作成するために必要なこととなります。
募集要項や求人票に使われた表現を、そのまま正確に履歴書でも使用してください。一部のATSプログラムは同義語や略語も認識しますが、リスクを避けるためにも原文通りの表現を使うのが一番です。例えば検索エンジン最適化のスキルを求めている求人であれば、正式名称と略語の両方(「検索エンジン最適化 (SEO)」)を使うことをおすすめします。
場合によっては、転職活動を行った結果として求人票を出していない企業に応募することがあるかもしれません。そのような時こそ、その企業サイトやその他の関連情報源を調べあげてください。 ウェブページで頻繁に使用される単語を特定するには、それらをすべてコピーして、WordCloudやWordle などの「ワードクラウド」ジェネレーターに貼り付けます。一種の課題として捉えましょう。焦って行動しないでください。
ATSに対応した履歴書の最適化
履歴書の最適化は、検索エンジンが探しているキーワードやフレーズの使用に焦点を当てているという点でSEOに似ています。しかし、必要以上に力を入れると裏目に出てしまいます。SEOの世界で「キーワードスタッフィング」と呼ばれるのが、検索エンジンのランキングアップを期待して、好ましいキーワードを過剰に利用する手法です。ただし、こうした行為はスパムと見なされ、結局自分の首を絞める結果となってしまいます。これにより、検索エンジンはコンテンツのランクを下げることになります。これは、望ましい結果とは正反対になってしまいます。
キーワードスタッフィングされた文章は、不自然な印象になってしまいます。機械に打ち勝った後に目を通すのは、採用担当者である人間であることを忘れてはいけません。必要なキーワードを特定したら、それらを慎重に履歴書に、できれば別のセクションに挿入します。職歴の箇条書き、スキルセクション、プロフィールセクションと、状況に応じて使い分けましょう。
自然な文章表現を心がけてください。必要に応じてこれらを繰り返すことは問題ありませんが、何度も繰り返さないでください。
応募ごとにカスタマイズ
履歴書のファイル形式として「古臭い形式」は避けましょう。履歴書は、未来の採用企業それぞれに向けてカスタマイズした文書である必要があります。以前は紙の履歴書を郵送するのが一般的でした。親の世代は、印刷業者に発注して高級紙50部ほどを印刷してもらったかもしれません。あの手の履歴書の時代は終わったのです。履歴書は編集可能なドキュメントで、企業ごとに準備して作成するものです。これが「採用管理システム」に合わせる姿勢ということです。
自分の履歴書がATSに対応しているかどうか判断する方法を教えてください。
職務内容から直接引用したスキルと経験を記載している場合、履歴書はATSに対応している可能性が高いでしょう。もちろん事実だけを記載してください。
ATS対応の履歴書フォーマットのヒント
ATSが読み取れないファイルタイプ、フォント、箇条書きスタイル、画像など、デザインや書式設定の問題には、潜在的な落とし穴が数多くあります。一部のフォントが、ATSで読みづらいという指摘もありますが、真偽は不明です。ただ奇抜あるいは個性の強すぎるフォントは危険です。ATSを混乱させかねないし、そもそも採用担当者を唖然とさせてしまいます。適切なフォント選びに関しては「履歴書に最適なフォントとは」の記事を参考にしてください。
以下がその他のフォーマットに関するヒントです。
- シンプルですっきりとした フォーマットを選んでください。画像や複雑なデザインは避けてください。明朝体が標準で、セクションごとに適切な見出しを使用してください。
- 表や列の使用は避けてください。ATSが読み取れない場合があります。箇条書きとシンプルなテキストレイアウトで内容を整理します。
- 求人ごとにカスタマイズします。各求人情報の要件に合わせカスタマイズし、関連キーワードを織り交ぜます。
- 標準的なセクション見出し使用します。「サマリー」「職歴」「学歴」「スキル」といった一般的な見出しを使用します。独創的な見出しはATSが認識できない可能性があります。
- 互換性のあるファイル形式で保存します。docxやpdfといった広く受け入れられるものを使用します。時として一般的でないファイルはサポートされていない場合があります。
- 適切なキーワード使用します。職務内容から、関連キーワードを組み込みます。あなたの履歴書がそのポジションに適していると、ATSが判断するのに役立ちます。
- 頭字語や略語は避けましょう。業界固有の専門用語や略語は正式名称で記載します。例えば「SEO」ではなく「検索エンジン最適化」と書きます。
- 特殊な箇条書き記号もATSを混乱させる可能性が大です。黒丸印か空丸の矢印、四角の記号にとどめておきます。
画像はATSが読み取れません。あなたの名前を凝ったロゴに変換して、履歴書上部に配置したくなるかもしれません。それが.jpegや.png、.tif画像なら、機械で認識できません。テキストを画像ファイルに変換しないでください。
プロフェッショナルな 履歴書テンプレートを活用すれば、履歴書の構成方法に関するガイドとなります。含むべき要素は、A)連絡先情報のヘッダー B)サマリー C)職歴 D)学歴 E)スキル、です。ちなみに「スキル」を「スーパーパワー」などの個性ある言い回しで表現することは避けてください。ATSは、あなたの履歴書のどのセクションを読んでいるのかを分かっている必要があり、上記のような簡単な用語に基づいて判断するのです。
あなたの大作を保存するファイルタイプの選び方次第では、失敗する可能性があります。PDFが好ましいとされますが、一部のATSはWord形式を求める場合があります。アップロード前に確認をしてください。もし採用担当者がWord形式を指定している場合は、必ず.docか.docxで送付してください。そうでなければPDFを使用します。こうした落とし穴を回避するには、Rirekisho.jpのプロフェッショナルで現場テスト済みのテンプレートを利用するのが一番です。こういった問題は全て事前に解決されているので、必要なのはあなたの情報を入力することだけです。
ATSに関するよくある質問
以下はGoogle検索データに基づく、ATSについてよく寄せられる質問です。
ATSに対応した履歴書とは?
「ATSに対応した履歴書」または「ATSに準拠した履歴書」とは、求人募集企業がATSに入力したと思われる、求人条件に含まれるキーワードを使用した履歴書のことです。採用担当者まであなたの情報が届くことを意味しますが、全く同じように見えるという意味ではありません。
ATSに対応した履歴書の書き方とは?
ATSに対応した履歴書の作成には、求人票に含まれる主要な単語やフレーズ(例えば「ヘルプデスク業務」など)を履歴書中でも使用することがポイントです。加えて、ほとんどのATSソフトと互換性のあるフォーマットを用いることも大切です。大切な履歴書が却下されることは避けたいものです。
テキストボックスはATSに対応していますか?
テキストボックスは注意して使用してください。表や列と同様にオブジェクトと認識して、読み飛ばしてしまうATSもあります。データを使って複雑なストーリーを伝えたい場合は、概要のみ記載して面接中に詳細を共有したいと伝えます。あるいは、LinkedInのプロフィールで補足情報を提供することもできるかもしれません。外部サイトへのリンクが機能しないこともあるため、完全なURLを明記してください。
ATSシステムはカバーレターもスキャンしますか?
企業によっては、ATSソフト上で履歴書とカバーレターの両方を処理する場合と、そうでない場合があります。万が一に備えて、ATS対応のレターを作成することが最善ですが、履歴書にキーワードを含めることの方が重要です。ATSはレターを保存する機能があるかもしれませんが、採用担当者側に最初から表示されない場合があるからです。疑わしい場合は、カバーレターを添付してください。
重要ポイント
あなたの履歴書がATSを通過できるかどうか、またさまざまなソフトによってどんな情報を解析するかをチェックするサービスがあります。採用担当者側が、あなたの提出した履歴書をそのままの形で閲覧しているとは限らないので、派手な画像やグラフィックには注意してください。特定のソフトでは、すべての応募を標準化するために、情報を単純なプレーンテキストに変換する場合があります。
- 可愛らしさは不要です。奇抜なフォント、派手なグラフィック、その他ギミックなどは使用しないでください。
- 履歴書が含むべき要素の定石を覆さないでください。体系的に分類されたATS
- 用の履歴書を使用してください。
- 詰め込みすぎないようにしましょう。文字だらけの履歴書を読みたい人はいません。 空白部分の余地を残しておきます。
- キーワードと流行語の混同に注意してください。「チームプレーヤー」「自発的に行動できる」といった決まり文句は避けてください。
- 外資系の場合、1ページのカバーレターを添付することを忘れずにしてください。レターがないと、履歴書が不採用になる要因の一つになりえます。
- 誤字脱字はないようにしてください。採用担当者に向けた調査で、不採用の理由にのトップに上がるのが、誤字脱字や文法上のミスです。
- 最終審査は人間がすることを忘れないでください。美しく、よく書かれた、記憶に残る履歴書を作成しましょう。
Rirekisho.jpは、あらゆる職業向けに現場で実証済みのプロフェッショナルなテンプレートを提供する、履歴書のリーディングカンパニーです。想定される全ての職種向けに、詳細な履歴書の書き方ガイドを公開しています。当社のビルダーツールを使えば、誰でも驚くほど短時間で最初から最後までプロフェッショナルな履歴書を作成できます。
まずはテンプレートをプレビューして、気に入ったものを選択し、ご自身の情報の記入からスタートしましょう。履歴書を書くという込み入った部分はまだ行う必要がありますが、実証済みのフレームワークとフレーズもご提案します。 効果があることが実証されている、設計済みの形式を選択することで、推測に頼る作業を取り除きます。